Vegan(ビーガン)市場が急上昇

アメリカの都市部では最近、Vegan(ビーガン)と呼ばれる人達が増えている。

ビーガンはベジタリアンの中でも一番厳しい純粋菜食主義のグループ。肉や魚だけでなく、乳製品や蜂蜜など動物から取れたものは一切口にせず、皮やダウンといった動物性の素材を用いた衣服も着用しないという徹底ぶりだ。動物愛護や環境保護、反戦などとも深く結びついており、単なる食事法に留まらず、個人の主義・思想が伴っているところが特徴となっている。ライフスタイルということもできるだろう。

ビーガン層の拡大とともに、その市場が急上昇している。ビーガン・レストランというのが各地にオープンし、ビーガン・シェフというのも登場している。ビーガンに関する本も次々と出版され、企業もビーガンを対象とした商品開発に力を入れている。

動物性の食材はすべてダメなので、ビーガンはタンパク質の摂取を豆類(特に大豆)に依存している。そのため、日本でも注目を集めているテンペを使ったハンバーグを作ったり、大豆をパテ状にして鶏肉風にしたり、牛乳の代わりに豆乳を使ったりと、独自の調理法を開発している。また小麦グルテンから作られた「穀物の肉」と呼ばれるセイタンも、欠かすことのできない材料だ。

Native Foods」はカリフォルニアの有名なビーガン・レストラン。現在、ロサンゼルスとパーム・スプリングス地域に4店舗を展開し、来年はさらにサンディエゴとサンフランシスコに新規オープンする予定だという。その後、フランチャイズ化の計画もあるという急成長中のレストランだ。店のスローガンは「Eat Peace」。

ビーガン・ビジネスはビーガンだけを対象としているわけではない。普段は肉を食べる人も、有機野菜たっぷりのサラダや栄養豊富なテンペ料理を食べるために、ビーガン・レストランに足を運ぶ。新鮮な素材を使ったレシピを知りたくて、ビーガンの料理本を買う。ビーガン枠の外にいるが、健康に気を使う人やグルメな人たちが、ビーガン・ビジネスを支える大きな市場になっているのだ。

Native Foodsのメニューを見ると、テンペやセイタンだけでなく、白米、玄米、ジャスミン米、そば、枝豆といったアジアの食材が多種使われていることが分かる。ビーガンは、穀物や豆類をふんだんに使ったアジアの食文化なしには成り立たないと言っても過言ではないだろう。アメリカにおけるアジアフードの人気は、こういう側面からも支えられている。日本の食品会社にも、大きなビジネスチャンスがある。

国全体として「肥満大国」路線を直進する一方で、こういう一端があるのはいかにもアメリカらしくて面白い。しかし、ビーガンの広がりは都会のごく一部における傾向であって、間違っても、ブッシュに投票するような州には起こらない話だ。


2004.11.08

追記:ビーガンに関する記事を日経レストラン10月号に執筆しました(2005年10月)