「My Big Fat Greek Wedding」 その後

以前にジャーナルで書いたインディ映画「My Big Fat Greek Wedding」(以下、Greek Wedding)のその後についての報告。

あれから半年、話題がさらなる話題を、人気がさらなる人気を、リピーターがさらなるリピーターを呼び、1億ドルどころか2億ドルも悠々と突破し、インディ映画として最高の売上を記録してしまった。2002年4月19日の公開から約1年のロングランを経て、累積興行収入2億4143万ドル(約290億円)、アメリカ映画史上で第28位という快挙を成し遂げた。ちなみに、これは「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」(40位)や「ゴーストバスターズ」(29位)といったヒット映画を超えた数字だ。

主役を演じたギリシャ系カナダ人女優の二ア・ヴァルダロスは、一躍注目の的となった。この映画は彼女の実話に基づく自作の脚本なのだ。彼女は自分の成功をこう振り返る。「私はずっと中途半端な役者で、時々アルバイトをしないと食べていけなかったの。でも、本当の自分をさらけ出すような芝居がしたいと思ったら、その答えがギリシャだった。だって、自分のアイデンティティはギリシャ以外に考えられなかったから。」

彼女はマスコミの取材やテレビ出演に引っ張りだこになり、あっという間にスターの顔ぶれの中に並ぶようになった。映画がさまざまな映画祭や賞にノミネートされたため、授賞式でも常連となった。たった数ヵ月で彼女の人生は一変した。まさに現代版のシンデレラ・ストーリである。映画の中で演じたテュラは30歳だったが、バルダロスは実は1962年生まれの40歳。しかし、それでもハリウッドにはチャンスがあるということを、こんなにも明確に証明した。おそらく、全米に何万といる売れない女優を相当勇気付けたことだろう。

まだ映画が公開中にも関わらず、今年の2月11日にDVDとVHSが発売となり、間もなく売上チャートのトップ入りを果たす。また、ほぼ同じ顔ぶれで「My Big Fat Greek Life」というテレビドラマが3月からCBSで放映されている。とにかく去年の夏以降、どこへ行ってもこの話題ばかり。ギリシャ文化に注目が集まるようになり、アメリカに「ビッグ・ファット・グリーク現象」を引き起こしたのだ。

さて、日本での公開が決まったらしい。松竹東急系で7月19日からだ。邦題は「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」。やっぱり、というか、一番重要な「グリーク」の部分が抜けている。日本人には「グリーク」と「ギリシャ」が結びつかないのだろう。この「グリーク抜き」が象徴するかのように、日本でのマーケティングはもっぱら「タイタニックに次ぐ恋愛映画」、「理想的な結婚物語」といった切り口で、完全に若い女性がターゲットになっている。公式サイトは全面ピンクだ。

日本人はまだ、移民とか多文化といった世界的な流れに興味がないということだろうか。それとも配給側が「そんなテーマは日本と関係ない。『イケてない女が王子様と結婚する』ってことで宣伝しないと、売れやしないよ」と勝手に決めた末の戦略なのか。いずれにしても、Greek Weddingをただの恋愛映画として観てしまったら、なんとなく陳腐な印象になってしまうのではないかと心配してしまう。だって結末はもう分かっているのだから。

この映画の本当の面白みは、前回のコラムで書いたように、実は恋愛以外の部分にある。アメリカだけでなく、カナダやヨーロッパ、オーストラリアといった各国で支持を受けたのは、そこに「文化的多様性に対する感情移入」という共通項があるからだ。それを無視してこの映画を観るのはもったいないし、これから日本にも確実にやって来る「移民の時代」を啓蒙する意味でも重要だと思う。公開前に配給側にあれこれ文句をつけたくないけど、作品をこれだけひいきにしていて、回し者かと思われてるくらいだから、バランスが取れてちょうどいいくらいだろう。

より多くの日本人がGreek Weddingを観ることになれば、それはそれで嬉しい。これから半年後、映画の売れ行きや日本人の感想をもとに、どんなコラムを書くことになるか楽しみだ。


2003.04.18

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